おみその脳みそ

猫や時事ネタや、ネトゲや仕事で使えるコミュニケーション術を扱います。

【創作】ドグラ・マグラ読んでたら桃太郎として転生したけど女児からやり直し(その1)

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…………ドウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。*1

 何度目だろうか。私がブラコブラコと胴を持ち上げた時、この銅鐸の噎びくような音は、まだ、その剛性を効かせた余韻として私の脳の中にハッキシと棲み着いていた。
 それをジッと聞いているうちに意識がはっきししてくると……今は大晦日だな……と一〇九回目の音を待たず直覚した。いつから数えていたのか、そうして坊主の仕事は進みゆくのだな……と音だけの記憶に思い思い、又もブラコブラコしているうちに、その銅鐸の噎びは、いつとなく何処となくに消え散り行って、そこいら中がヒッソリと静まり返っていった。
 私は胴に冷たいものを感じた。

 水。
 長居をしていたことを忘れていたのは、水が人肌に丁度良かったからだろうか。腰椎から剣状突起まで、水に浸ったそれは付焼けきっていた。鳩の鳩尾*2なんぞとうも知らないとクックトゥルーどこ吹く風。さうかと思えば薄白い骨盤を蔽った裸の皮膚がタッタひとつのぼんやりと月明かりに照り出された。くびれたソレは自分のものと知覚するのには、腐りかけた果物のような表皮面に手を当てるまで別の艶めかしい屍体やその類に思われたため時間がかかったようだ。

赤白色く光る横腹に、一寸の影が落ちては消えを繰り返し、ユウラユラと世界も合わせて揺れているのは、いよいよ死んだようにじっとしているのは自分自信が揺れているのだったと分かれば、手を周囲に這わせると自分は狭く丸い無花果を返したものに囲まれているではないか。こんなことがあって堪るかと農家の親父であれば直ちに外から薪割り斧でこいつを叩き切るのであろう。いよいよぼやけていた意識も鮮明になってきたかと思うと、月明かりがまたフッと何かの影に囲まれてしまい、私を監禁する無花果を暗くしたので、まぶたは重くなり途絶えていった。

…………ドウウ――――――ンンン――――――コンンンン………………。

一一〇回目に銅鐸が鳴り響いたとき、ヒッと身を引き攣ら得た。どうしてか胎児のように膝を抱え水に浸っていた私はこの無花果の壁に仰け反っった反動で頭を打った。頭部を壁にぶつけた音を入れてしまえば脳内に響く銅鐸の音は一一一回となるわけであるが、数えていたわけではなしに、意識は飛んでいたようだし回数も定かではない。

重い目蓋を開き。再び月に照らされた私は目玉だけであたりを見渡せば、やはりまだ無花果を返した狭い檻に監禁されている。時の連続性を掴めず、不連続に時空を漂っていた。そして、先程までブラコブラコと私を持ち上げたのは、やはり私自身の力ではなく、無花果そのものの動きによるものだと月の動きからも理解し始めた。月明かりが長く入るようになると檻の中の水はユウラユラと波を立てている。川を流れているように感じた。

ふと次の異変に気づく。赤白かった横腹から先は見慣れたものが無かった。腰から先の支配者というべきか、あれがない。かつての記憶といってしまえば、とは言え記憶とも意識とも身元の定まっていない自分のことだから、創作だとか盲言の類になってしまうのかもしれないのだが恐らく私は男であった。男であった証拠にそれの消失に気づくことができた。

そして水にふやけてしまってはいるが、記憶の彼方には私が今は男ではなく女の、それもまだ生まれていないであろうことを比較により証拠づける身体的特徴があった。私は箱のようなものに閉じ込められ何処かを漂う女児であったのだ。冷めたい水面の上に、私は膝を抱えてに長くなって寝ていたのが女児である私であった。
 ……おかしいな…………。

さう違和感に気づくと同時に

…………ジャブ――――――サンンン――――――ジインンンン………………。

何か人の声と、川辺をかき回すような音が聞こえてきた。自分の状況を棚上げするようであるがこんな真夜中に人がいるだけでも不気味である。ましてや、川辺を何かでかき回しているとは正気の沙汰とは思えない。監禁され、女児となっていた自分よりもすぐにそちらの音に興味が移ってしまった。

(つづく)*3

*1:今回は文体模写となります

*2:みぞおち

*3:疲れたのと、興味を失ったので続かない非常に可能性が高い