【文体模写】もし夢野久作がマイナンバーを・・・【短編小説】
夢野久作という僕の好きな作家の
文体模写に挑戦してみました。
ルビをなるべくふりましたが、文章のテンポを落としたくないところはふっていません。
以下、続きからどうぞ。
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・ッブゥーーーン・・・
デ・
・・・・やッ…こりゃ失禮。電腦小路*1が混んでいたものでッ。 ええ、其れが電腦高速囘線*2では無くて。エエ、ハァイ…こりゃ失敬で…イヤ本當に迷惑をかける話で申し譯なしの痛み候、腹の鳴るところ知らずと云った樣なところで…。ハハァ、冗談はこの邊*3で。 どうも私くらい腦時閒の活動が長くなるとですねツイ一人の時閒が長くなるもので、そうそうツイツイ獨り*4語りに拍車が懸かって仕舞うというのが高翁の持つ生涯孤獨な道に入るプログラム*5というか…何時かこの情報は殘しておいた方がいいと思いましてね。 國家公安の腦内檢閱も近頃では嚴しくなって參りましたから、
電腦界へと意識を飛ばしているのですよ。…いやはや通信が良好に成って參りましたので、…オヤ。あなた樣は先に來ていましたか。この電腦空閒に於*6いては…
（以下、通信遮斷。記錄無し*7）
。 。 。
…イヤ。お笑いになっては困ります。事實*8、此*9れは祖父が小さいときにその祖父から聞いた話…つまり甲祖父から傳わる*10話なんですが。
エェ・・ハイ。話と云っても過去世界におけるマイクロチップなるものから復元した情報である爲め、名前があって個體識別番號*11とかもあったというのは信じがたい、そう過去のデーヴァイスの情報の信賴度の低さと言ったら、特に和の國だったか日の昇る國とかいうのは…「ギリ」だか「キリ」だか、掴めもしない木も育たない、今の論理的かつ效率的になった價値基準*12からは到底想像もできないような信賴*13という物を對價にやりとりをしていたそうで…ははあ、面目ない話で御座衞ます*14。ともかくさのような時代があったみたいなのですよ。（以下、通信不調。）
「サァさ、どうぞ」こちらへおかけ下さいませ。オヤ…？まだ繋がっておいでですか。時閒の槪念の殘っている時代との交信というのは隨分と難しいと聞いてはおりましたが、切れたり繋がったりするものとは思いませんでしたよ。いやはや、こちらの話で御座衞まして。エェ‥ハイ。サテハ此の通信は成功しているのであらうかが此方にも分かっておりま
（以下、識別不明。エラー番號000000。）兎にも角にも、個體識別番號といったものは政府‥？さて。セーフだったかアウトだったか、…申し譯ないネエ、俺の腦の正
確性も不安定になってきて終いになってきたかな。野球の話だった…で…和の國というのはとんでもない野球信者の集まる國
と聞いたもんだから…そもそもね、野球というゲームのルールには嚴しかったそうなのですよ。そりゃあ審判がセーフと言えば、例え手を染めていても、足を洗っていても、顏がウンと縱
＜＜－－－ココカラココマデ伝聞ーーー＞＞
に動いたもんなら何が何でも許可をされる世界で…そうそう。
ハハハ。いやそんな馬鹿な話が、とお思いになる氣持ちも分かるよ。然し其れが現實*15に存在しサイエンスティックファンタジーとでも言ったところかな。恐ろしい氣持ちになるでしょ。
この野球世界で審判が「ヤ。貴公は１２番である。そのため１
壘へ進壘せよ」と申せばそのようになるのよ。 ん…失禮失禮*16、お客樣でしたカ。近頃は禮と無禮の差もなくな
ってきたもので…そりゃア、審判は公平を規すという立場で御座いますから、敵だか味方だかの大將が不平や不滿を申すことも有りました。口というもんは便利なもので、心に思った瞬閒には發聲を通じてその場にいる者の鼓膜を振動させることが出來るものです。
ハイ、傳わるわけです。然し、耳というものも便利で。「聞いた聞かない」いや、そらなんだと「聞かないふり」や恍けると
いうことも簡單に出來たのが昔の人閒の暮らしでありました。エッ……何ですって。私の話が本當らしくない……させられない……。そ、そんな箆棒な… …不公平な……聞いた聞かないはそこまで大事ではなくてですね‥‥アレエ――ッ……。誰も居 やがらねえ。
こんな棺桶の中に……。可笑しいな。俺あサッキから獨りで饒 舌っていたのかな。何を饒舌って*17いたんだろう。オヤオヤオヤ。番號が…何處にも無いナア。
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・ 意識だけで社會が構成された未來からの手紙は 個體識別番號を持たぬとこのように成るわけで御座います。
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男「以上。音読による検閲完了であります。」 男「内容が不明であるため、過去に送りましょう。」
